【レビュー】64Audio Fourté Noir:音を塗り重ねていく多層のレイヤーが音楽に単なる奥行きとは違う、深みのある充実感をもたらす。tia Fourtéよりも深く雄渾な音を持つ限定版。まさに最高峰

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免責事項

レビューは手持ちの機種と販売店舗さんのご厚意で試聴させていただいた範囲内の機種で作成しております。ケーブルは標準付属品のはずですが、セッティングは販売店舗さんにより異なる場合があります。イヤーピースは手持ちのものを使える場合は、それを用いてテストしております。レファレンスはJVC スパイラルドット++ Lサイズですが、機種によって使えない場合もあるかもしれません。使えない場合どうするかはその都度。

テスト機は基本的にAstell & Kern KANN CUBEを用いていますが、音質の特徴を捉えるために副次的にONKYO GRANBEATなど別のDAPも使っております。

一応解像度とかの比較用にイヤホンのレファレンスを定めていて、EarSonics ES5です。

スペック

  • ドライバー:ハイブリッド
  • ドライバー構成:4ドライバー(Low [Dynamic] x 1, tia Mid x 1, Mid/High x 1, tia High x 1)
  • 周波数特性:5Hz – 22kHz
  • インピーダンス:10Ω
  • 感度:114dB

使用感

装着感

滑らかに耳穴周辺にスポッと収まる感じ。本体は軽量で負担感もない。

遮音性

耳をしっかり覆うので、遮音性は高め。

ビルドクオリティ

一見プラモデルのようなチープな印象を受けるかも知れないが、フェイスプレートを含め精巧に工作されており、充分な耐久性が期待できそう。

音質

総合:28/30
9.3/10

高域

8/10
8/10

tia Fourtéに比べて少し閉じており、中域でより濃さを感じさせる

  • 質感:ニュートラル、自然、みずみずしい
  • 明るさ:明るめ
  • 拡張性:かなり良い
  • 派手さ:普通
  • 緻密さ:やや緻密

高域は充分に明るく、光沢感と透明感に満ちており、金物に少しスパイキーさがあって手がかりを与えてくれるが、基本的には目立った強調がなく、滑らかに抜けていく。ドライな感触はほとんどなく、ツヤがあり、みずみずしい。音には繊細なタッチが感じられるが、細い印象は受けず、自然な広がりを感じる。

中域

10/10
10/10

多層で厚みと奥行き感を感じさせる、レイヤー感の強い、充実した中域

  • 質感:ニュートラル
  • 明るさ:明るめ
  • 横幅:広い
  • 奥行き:広い
  • ボーカル:明るめ、ツヤツヤ

中域はtia Fourtéより少し濃い。これは高域と低域との力関係に由来する。ボーカルはしっかり前面に出てきて、はっきり濃いボディを持っているが、抜けが良く滞留感はない。

特徴的なのは音の分離感の表現の仕方で、音を並べるというより、層として重ねる出し方をするため、音同士が塗り重なって、濃く感じられる。KANN CUBEだとこの濃厚感は少し濃いかなくらいだが、たとえばより中域で発色と厚みを強調する傾向のあるCayin N6IIで聴くと差は歴然で、一つの層の音の奥行きが増す分だけ、全体に厚みが加わり、濃厚感が相乗されていく感覚がある。

この層状の音は広がりが良く、頭を囲い込んでくる横幅を持っており、定位は充分に広く表現される。奥行きの面では一聴すると音同士が重なっていて見通しが悪い気がするが、よく聴いてみると、音の重なりは向こう側まで届いているかのように奥深く、奥行き感の面でも優秀さを感じることができる。

低域

10/10
10/10

tia Fourtéより深く、透明で雄大な低域が音場全体を深掘りする感覚がある

  • 質感:ニュートラル、クリア
  • 明るさ:明るめ
  • 重心:低め
  • 重み:重い
  • 重低音:深みがあり黒い深淵を持つ

tia Fourtéより低域は明らかに深いところまで出ており、とくに重低音の沈み込みは一段下がる。低域の持つ引力もより強まっており、音楽全体の重心はtia Fourtéよりは下にある。この低域のおかげで、tia Fourtéよりも懐が深くなっており、音楽全体の奥行き感が増して感じられる。

tia Fourtéはより明るい高域ともう少し上向いた低域を持っていたために、比較的安定感のある三角形の立体感が感じられ、高域では開放感もあったが、こちらはより安定的でやや下に深いボウル状、あるいは逆ドーム状の空間を感じる。

低域の質感は透明。中低域に厚みがありつつも重低音まで素直に深く落ち込む見通しの良さがあり、深さの距離感が感じられるゆったりした懐がありながらもスピード感に劣る感じはなく、むしろ機敏。

何よりもこの低域は、音場全体を左右する存在感がありながらも、自身はほとんど無色で中域以上に色づけすることがなく、そのため音楽全体の色味において、あくまで原音忠実性が担保されている。

そのため音源やDAPによる音色の変化がむしろ中域でしっかり感じられる。

  • 【レビュー】64Audio Fourté Noir:音を塗り重ねていく多層のレイヤーが音楽に単なる奥行きとは違う、深みのある充実感をもたらす。tia Fourtéよりも深く雄渾な音を持つ限定版。まさに最高峰

    これまで比較的音を林立させるような表現のイヤホンは多く聴いてきましたけど、ここまでレイヤー感を出してくるイヤホンは初めてです。まあ驚くべきは色味において、とことんまで透明でニュートラルさを求めるストイックさと、聞き心地の安定感ね。少なくとも聞き心地に関して不快要素はほぼ皆無です。 表現に関しては意外と好き嫌いはありそう。理由は説明したので繰り返さないけど、組み合わせるDAPによって濃淡が露骨に出やすいところがあるし、一般的なディテールを強調する発想とは真逆の表現で攻めてるから、エッジとか分離感で語るような解像度って捉え方でいくと、むしろ平凡な語り口でこの機種を語ることになりかねない。正直音の質の次元でいえば、そこで勝負している機種ではなくて、むしろ広がりと充実感、奥行き感っていう音空間表現のありかたそのものに挑戦している機種。 率直に言って、これは一瞬で欲しくなりました。明らかに価格ヤバいんで次の瞬間には我慢できましたけど、40万円気軽に出せるなら、これはいまのところ一番のおすすめです。
  • 【レビュー】beyerdynamic XELENTO REMOTE:雄大で温かみがありながら、音場全ての音がクリアに聞こえてくる万能系イヤホン

    一言で言えば、beyerdynamic恐るべしとしか言いようのないレベルの高いイヤホン。適度な温かみのある音色は聞き疲れせずに浸ってられるし、暖かいからと言って音像にぼやける感じはなく、スピード感もかなり出るので激しい曲でももたつかない。重低音も深く地の底から聞こえてくるような地熱を持っていて、情報量が多い。 強いて言えば低域にピントが合いやすい印象を受けるが、比較的全音域にディテールが分散されていて、どこかの音域が露骨に目立つということはない。密度感も満遍なく、明るさも見通しが良い程度には明るいが、キラキラと強調する感じもなく、自然な温もり感を維持している。音を雄大に丁寧に聴かせる感じ、ドイツだわ~。手持ちのSENNHEISER HD599も音の雄大な感じ、似ているな~って聞き惚れました。 好きです、この音。

おすすめイヤホン

官能性

RIRIKO 「その未来へ」

ギターが明るく、耳に心地よいチャリチャリとした輪郭がきれいに刻みを入れる。そういうと軽い音のように思うかも知れないが、とんでもない。その音には幅と厚みがあって太い筆で描き込んだように雄大である。ボーカルもはっきりと濃く、力強い膨らみを持ちながら、上では穂先が伸びるように息感が見通しよく少しシャープに表現され、スリムさを感じさせる。

だがこの曲で驚くべきは低域である。この曲をtia Fourtéと聞き比べていたとき、最初はほとんど差を感じず、むしろ高域が少し閉じた分だけ、わずかにさわやかさに欠けるとさえ思った。だが、ドラムが音を鳴らし始めた途端に、一段深みのある音が、たとえばグランドキャニオンのあの偉大な谷底を思わせるほどのスケール感で深掘りしてきて、一気に情景が変わる瞬間を感じた。グランドキャニオンって周り砂漠で何もないところにいきなりドカッと出てきて自然の驚異みたいなのを問答無用で感じさせるじゃん?まさにあんな感じで低域の深いところの音が出始めた途端に、このイヤホンは世界観に衝撃を与えてくれる。いきなり「ボーッと生きてんじゃねぇよ!」って喝入れられた感じがするほど、目の前の世界が変わるっていうね。

この曲に関する限り、tia Fourtéよりも迫力と説得力を感じることができる。そして、それはおそらく他のイヤホンではにわかに味わうことができないレベル。しかもこんなにも雄大なスケールの音なのに、耳に疲労感がほとんどない。それはまさに空前ともいうべき低域の透明感によってもたらされており、つまり一言で言うと、この透明感を出せる「apexやべぇ」となる。

戸松遥 「ユメセカイ」

ボーカル最強伝説。少しはっきりしたボーイッシュなキャラクターを持つボーカルだが、こういう声色はtia Fourtéよりこちらのイヤホンで聴くのが個人的には好み。懐の深い、しかも透明感のある色づけの少ない低域もこの曲向きで、クールにキラキラでもなく、ウォームにふんわりしすぎることもない、自然な暖かみのある空間を実現している。

個々の音の質感は透明でモニター的であると感じさせながらも、音の広がりと重なりでリスニング的な充実感がもたらせているその素晴らしいバランス感覚には脱帽するしかない。そしてこのイヤホンでは解像度が高いDAPほどレイヤー数が単純に増える感覚があるので、インピーダンス的には鳴らすのに決してパワーを必要としないものの、より解像度感の高い粒立ちの良いDAPほど音の厚みと充実感が増えるという相乗効果が感じられる。アンプパワーではなくDAPの解像度が表現の厚みにつながるという体験を生々しく感じさせてくれる恐るべきイヤホンである。

Snail's House × Moe Shop 「Pastel」

低域の引力はEDM曲でも遺憾なく発揮される。にわかにダイナミック型とは思えない正確で透明、機敏な瞬発力を持ちつつ、しっかり深く厚いダイナミック型らしさも併せ持つというのが驚嘆すべきところで、EDM最強神話すら頭をよぎる。少なくともこれまでいろいろ良質と言える低域を聴いてきた気がするけど、これは別格。ただ濃いだけじゃない、クリアな深みがあるって何なの?反則じゃねぇ?

課題はむしろ多層構造を持つ中域の方かも知れない。このイヤホンは好き嫌いが案外分かれる機種でもあるという話を販売店員さんから聞いたが、それはDAPによって中域の層が厚くなって、やや鈍重に感じられるところがあるせいだろう。実際この曲でも、N6IIのようなちょっと濃厚系のDAPで聴くと、層の重なりによる音の色味の濃厚感が出過ぎて、EDMというよりJAZZになっていて少しくどいかなと感じるところがある。普段あまりにもモニター的で音の色味については薄味過ぎると感じるKANN CUBEがむしろレイヤー枚数多くクリアな重なりを感じさせてくれて、説得力を発揮するというね。薄い透明感を感じるくらい解像度重視のDAPのほうがむしろ相性が良い印象を受けた。

春奈るな 「Overfly」

この曲でも、独特の優れたレイヤー感がもたらす、透明なのに濃密という反則技を思う存分味わうことができる。ピアノとシンバルの関係性に注目して欲しいが、普通はピアノはピアノ、シンバルはシンバルと分離感はっきり聞こえてくるのが普通なんだけど、このイヤホンで聴くと、ピアノがシンバルと重なりながら、しかもそれぞれの音のキャラクターははっきりと分けられながら聞こえるという、「どうなってんの?」な体験ができる。まさに神の如く、その音は「一者にして空間全体に偏在する」かのような神学的感覚さえ呼び覚ましかねない。

バスドラムの音もほとんど空間全体から聞こえてくるようにさえ思えるが、それは下から響き渡っているのではなく、本当にほとんど空間全体から聞こえてくるかのようなのである。

小椋佳 「光の橋を越えて」

小椋佳大全集

ボーカルは充分に濃く、コクと張りがあり、そしてつややかに透明。下では深いトーンを、上では伸びやかに若々しく、抑揚に満ちた成熟した味わいを見せる。バリトンボイスは明らかにtia Fourtéより深煎りに上質に感じられるだろう。音場は広く、たゆたうような音のそれぞれを幅を持って聞かせ、それぞれが重なり合って全体的な充実感を高めてくれる。一体どれほどか分からないが、多数のスピーカーがシームレスに空間全体に音を行き渡らせているようで、音の視界は360°全面に開けているようである。そしてその厚みの向こうになお、奥行きが感じられる。

透明で中立的であるために、中高域の艶やかさが上から下まで透徹するように、自然光を思わせる明るさの音場が心地よい。

ORESAMA 「OPEN THE WORLDS」

「これって本当にイヤホンですかね?」っていうくらい自然な太さの音が透明に広がっている。ピアノの連弾の繋がりとか一続きというくらいに滑らかで自然なツヤと厚みで連なっていくのに、ツルンとしながらも切れ目がしっかりしている。

透明な低域の恐るべき表現がこの曲でもダイナミックに聴かせてくれるんだけど、それについてはすでに言葉を尽くしたから、ここで繰り返さない。

おすすめイヤーピース

この機種のノズルの太さは普通。比較的万能にイヤーピースを合わせやすい。

AZLA SednaEarFit

AZLA SednaEarfit

全体的にコントラスト感が上がり、低域のドンと中高域のチャリチャリした煌めき感が向上する。ただこのイヤホンでは低域の存在感が増すと、結構音場全体の音がはっきりする感じがあって、場合によっては重苦しくなるかも知れない。

Fender SureSeal Tips

Fender SUreSeal tips

密閉性が高く、低域が少し濃く聞こえ、ボーカルも濃厚感が増す。

JVC SpiralDot++

JVC スパイラルドット++

音の広がりが良く、音場もほどよく広く、レイヤーの重なりから来る圧迫感が減り、見通しも良く感じられるのでおすすめ。

final E-CLEAR

final E-clear

ボーカルフォーカスが強まる。全体的に音が滑らかになって、聞き心地は安定する。

Epro Horn-Shaped TIPS

ePro Horn-shaped Tips

低域がやや柔らかく広がるようになり、音の剥き出し感が減って、高域にシルキーさが感じられるようになる。

radius DeepMount

radius deeo mount

横幅やや狭まる。ボーカルの伸びがよく鳴り、低域に広がりが出る。

【総評】レイヤリング最強伝説爆誕!

これまで比較的音を林立させるような表現のイヤホンは多く聴いてきましたけど、ここまでレイヤー感を出してくるイヤホンは初めてです。まあ驚くべきは色味において、とことんまで透明でニュートラルさを求めるストイックさと、聞き心地の安定感ね。少なくとも聞き心地に関して不快要素はほぼ皆無です。

表現に関しては意外と好き嫌いはありそう。理由は説明したので繰り返さないけど、組み合わせるDAPによって濃淡が露骨に出やすいところがあるし、一般的なディテールを強調する発想とは真逆の表現で攻めてるから、エッジとか分離感で語るような解像度って捉え方でいくと、むしろ平凡な語り口でこの機種を語ることになりかねない。正直音の質の次元でいえば、そこで勝負している機種ではなくて、むしろ広がりと充実感、奥行き感っていう音空間表現のありかたそのものに挑戦している機種。

率直に言って、これは一瞬で欲しくなりました。明らかに価格ヤバいんで次の瞬間には我慢できましたけど、40万円気軽に出せるなら、これはいまのところ一番のおすすめです。

64Audio Fourté Noir

9.3

高域

8.0/10

中域

10.0/10

低域

10.0/10

Pros

  • 奥行きと広がりに優れた優秀なレイヤー表現
  • 迫力に満ちているのに聞き疲れしない音
  • 透明で深みのある雄渾な低域
  • 抑揚と色づきに満ちた素晴らしいボーカル表現

Cons

  • 解像度感は強調されない
  • 音源によっては音に厚みが出すぎる
  • 高域のディテールは抑えめ

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