【レビュー】JVC HA-FX1100:地熱の感じられる豊かな低域に支えられた濃密な音が魅力。全体的に空気感の情報量が多く、芳醇。

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免責事項

レビューは手持ちの機種と販売店舗さんのご厚意で試聴させていただいた範囲内の機種で作成しております。ケーブルは標準付属品のはずですが、セッティングは販売店舗さんにより異なる場合があります。イヤーピースは手持ちのものを使える場合は、それを用いてテストしております。レファレンスはJVC スパイラルドット++ Lサイズですが、機種によって使えない場合もあるかもしれません。使えない場合どうするかはその都度。

テスト機は基本的にAstell & Kern KANN CUBEを用いていますが、音質の特徴を捉えるために副次的にONKYO GRANBEATなど別のDAPも使っております。

一応解像度とかの比較用にイヤホンのレファレンスを定めていて、EarSonics ES5です。

 

スペック

  • ドライバー:ダイナミック
  • ドライバー構成:1ドライバー
  • 周波数特性:6Hz~45,000Hz
  • インピーダンス:16Ω
  • 感度:106dB/1mW

使用感

装着感

やや横長のドラムハウジングで少し耳から出っ張るが、装着感は良い。

遮音性

耳への収まりは良く、遮音性はそこそこある。

ビルドクオリティ

木製デザインのハウジングに金色で金属ラインが入れられている。高級感があり、ビルドクオリティも高い。

音質

総合:27/30
9/10

高域

8/10
8/10

厚みを感じさせながら中域の豊かな音の上にしっかりと伸びる。鮮やかで濃厚。

  • 質感:ウォーム、太め、濃い
  • 明るさ:明るめ
  • 拡張性:かなり良い
  • 派手さ:やや派手
  • 緻密さ:普通

中域がやや前面に出て豊かな音色を聴かせているので、高域は少し奥から伸びてくるような感じがある。しかし拡張性が充分で、太く艶やかな音で豊かに伸びてくる。自然な太さがあり、アコースティックな温かみが感じられ、空間に溶け込み、空間とともに色づきながら聞こえる。輪郭を強調せず、緻密ではないが、色づきが良く、情報量は多い。

中域

9/10
9/10

濃厚、充実。空気感に満ちている。

  • 質感:ウォーム
  • 明るさ:普通
  • 横幅:やや広い
  • 奥行き:広い
  • ボーカル:自然な太さ、場合によって楽器に埋もれる

中低域の豊かな厚みを、そのまま上に引き上げたような豊かな中域は音が思う存分膨らみ、華やぎ、充実する空間となる。音の輪郭は明瞭でなく、溶け込み合っていながらも、定位はやや緩やかに把握することができ、音が反響しながら空間に響く豊かさをそのまま表現するホールにいるような情報量と空気感の多い音を聴くことができる。この中域の濃密さも独特のライブ感に影響している。

低域

10/10
10/10

情報量が多く、濃密で音の情報量が圧倒的に多いディテールと空気感に満ちた音。

  • 質感:ウォーム
  • 明るさ:普通
  • 重心:低い
  • 重み:重い
  • 重低音:深く、地熱が豊か

深く、重く、濃密で明らかに中域まで滲み出しているが、中域の音と豊かに溶け合うので、一体的な風味が感じられ、マスキングしている印象は受けない。ただしダンスミュージックなどでは中域に清潔感が出ないためにディケイに余韻が多分に出て、音の抜けにスピード感が感じられず、ややもたついた印象を受ける可能性がある。基本的にはクラシックやJAZZ、バラードなどのアコースティックサウンドと相性が良いゆったり系の低域である。

重低域の振動は100hz~40hzまで厚く力強い図太い振動で、30hzで沈み、20hzでわずかな振動感を残す。重低域には力強い地熱感があって、ベースやドラムのドンに熱気を加える深いレイヤー感のあるマントルを形作っている。

  • 【レビュー】final B2:つややかで潤いのある音を楽しめるイヤホン

    finalとしてはB2にクラシック音楽向きなホールで聴いてるかのような音響を目指したという。個人的にはその割には音場がみずみずしすぎてクリア感も高すぎる印象受ける。同じ値段なら間違いなくJVC HA-FX1100の方がクラシック音楽のダイナミズムがより感じられるし、反響音も豊かだと思う。 むしろ個人的には高域楽器音のみずみずしさとほどよい明るさのバランスからボーカルに自然と潤い感が感じられて充実して聞こえる感じに好感を持った。独特のしっとり感がありつつ、発色もきれいな感じはこのイヤホンでなければなかなか味わえないだろう。ピアノをはじめ様々な楽器の弾き語り曲なんかを豊かに聴くのに素晴らしいパフォーマンスを発揮しそうである。 イコライザーで高域をいじると、突き抜け感も驚くほど素直に出るようになるので、ボーカルがみずみずしいまま伸びるようになり、シンバルの空気感も増し、意外とポテンシャルが高いところも楽しみがいがある機種。まだB1・B3を聴いてないので最終判断は避けるが、密かにかなり物欲が刺激された。
  • 【レビュー】Astrotec Delphinus5:元気で快活な押し出しの強い中高域が魅力。明るいロックやポップスを楽しく聴きたいならこれ

    ボーカルフォーカスが非常に優秀なイヤホンなので、ポップスやアニソンを充分満足させて聴かせてくれる。押し出しは強く、音場は上向きで、少し明るさを強く出すところがあるので、そのあたりの押しの強いキャラクターが好みを分けそうで、落ち着いて音楽を楽しみたい人には向かないが、元気いっぱい快活な感じが好きなら、文句なくオススメできる。 低域がやや薄くなりがちなのと高域で案外突き抜けないあたりも気になるが、イヤーピースでも十分改善可能だし、イコライザーでいじれば比較的簡単に調整できそう。元々わかりやすい調整がされていて素性も良いので、イコライジングもしやすく、自分好みの音に合わせやすいだろう。

おすすめイヤホン

官能性

秦基博 「アルタイル」

低域に深みと確かな温度感があり、低域弦楽やドラムの音が深く重く柔らかく、しかし存在感充分に音場の底を支える。ピアノやヴァイオリンは中域全体を色づけするかのように豊かに膨らみ、その広がりにはスカスカしたところが全くなく、空間全てを音色で埋め尽くすかのよう。それでいて個々の楽器音の存在感は確かで定位も明瞭ではないが、明確である。

ボーカルも楽器音の混じり合う豊かな空間からそのまま浮かび上がるように、空間全体と一体感を持って聞こえる。

最近のハイファイ志向なオーディオの流行からするとボーカルはモニター的に分離されているのを好む傾向にあるから、分離の悪いこのボーカル表現は明らかに時代に逆行しているようでもあるが、濃厚で情報量豊かで圧倒的な説得力を持っているので、文句の言いようがない。

毛蟹 feat. DracoVirgo 「清廉なるHeretics」

このイヤホンで聴くこの曲は折り紙付きでやべぇですよ。ドラムの爆発力と熱気が明らかにイヤホンレベルの限界を超えているくらいの火力を持っています。おかげでこの曲の狂い咲くようなサビに圧倒的なパワフルさを感じることが出来ます。

楽器との関係性がよく、溶け合いながら聞こえるボーカルも素晴らしく、ピアノの豊かな光沢と受けて、妖艶なほどの甘味と息遣いを持っています。

低域のスピード感も充分で、音の広がり、情報量も豊かで確かなライブ感があり、迫力が空間全体を鳴動させるほど振り切れてます。

一言で言ってエモい。

下地紫野 & 悠木碧 「Harvest Moon Night」

音場全体に豊かな空気感が溢れているので、JAZZ風のこういう曲は全体的に情報量が多く、重低音も豊かに暖かにゆったり太く深く聞こえてくるので、骨太な重厚感がある。

ピアノやハープの奏でる艶やかな響きが空間全体に広がっていく様は非常に充実していてボリューム感がある。

ボーカルだけを聴くと必ずしも輪郭がはっきりせず、一聴すると埋もれている気がするが、少し視界を広げて、重低音の豊かな音色にもたれかかりながら、ゆったり浸ってみると、楽器と一体的に豊かに響き合って聞こえてくる。

この音をイヤホンサイズで味わえるというのは率直に言って贅沢すぎる。

SCANDAL 「Image」

ドラムやベースの鳴動感が強く、地熱が音場全体を満たす。ギターも黒く熱くジュワジュワした音で浮かれた感じがなくドライで、そうした個々の楽器が放つ熱量が空間全体に広がり、生々しいライブ感がある。

かなり音に厚みがあり、低域も深く重いにも関わらず、ウォームでほどよくディテールが分散されているから、一点にピントが合いすぎて聞き疲れるということがなく、充実感があるのに、浸って長時間聞き込める。

a・chi-a・chi 「STEP」

ウォームかつ、重量感・深掘り感ともに高レベルで充実感の高い豊かな低域が音場全体に躍動するライブ感を与えている。低域のディテールは素晴らしく、厚みがあり、重みもあるのに、決して透明な感じではないにも関わらず、重低音まで音像を明確に捉えることができる。

中域は充実して温かみがあって聞き心地が良く、ボーカルはその温かみの中で空間全体に艶やかで温度感のある声色を染み渡らせるかのように聞こえてくる。

Falcom Sound Team JDK 「アプリエス神殿」

元々透明感のある曲なので、HA-FX1100で聴くと、その透明感に豊かな色彩が加わって濃厚な艶やかさが出るようになる。低域はどこまでも沈み込むかのように深く、中高域の光沢感は空間に広がりながら、深みに向かっては手応えを残しつつも澄んで沈んでいくので、深淵に吸い込まれて非常に立体感がある。

音場は奥行き感が素晴らしく、溶け合う音の中に意識さえも溶け込んでしまいそうで、聴いているうちに吸い込まれて自我さえも音楽の中に一体化するかのような豊かな体験が出来る。

この曲に関しては圧倒的な聴き応えが感じられる。

おすすめイヤーピース

この機種のノズルの太さは普通。比較的万能にイヤーピースを合わせやすい。

AZLA SednaEarFit

AZLA SednaEarfit

低域はより黒く、コントラスト感が増すが、低域音のディテールが若干単純になり、空気感が失われたような印象を受ける。

JVC SpiralDot

JVC スパイラルドット

このイヤホンの標準イヤーピースになる。濃厚感を維持しつつ、音場の広さを丁寧に味わえる。スパイラルドット++に比べると、やや音に下向きの重力が感じられ、もっさりした感じはわずかに強い。

JVC SpiralDot++

JVC スパイラルドット++

スパイラルドットと比べると、中高域に少し開放感が増しており、すっきりして聞こえるため、スパイラルドットにあった音が少し下がっていく感じがなくなる。

final E-CLEAR

final E-clear

中高域に清潔感が出て、ボーカルの聞こえが良くなる。低域はやや浅くなるが、全体のバランスはよくなるかもしれない。

AZLA SednaEarFit Light

やや低域が浅い気がするが、スパイラルドット++とほぼ同様の効果が得られ、中高域にすっきり感が出て、開放的になる。

radius DeepMount

radius deeo mount

埋もれがちなボーカルの分離が良くなる。中高域の音場が少し狭くなるが、重低音はタイトで床面を感じさせるようになる。EDMやポップス向きにしたいときは効果が高いかも知れない。

【総評】JVC渾身の力作。その音は一言で言って「エモい」。

木製振動板が奏でる独特の温かみと豊かな情報量のあるディテールに満ちた音は、有機的でライブ感に満ちている。音の自然で豊かな広がりに空間性を存分に感じることができ、音楽を場そのものまるごと味わえるという贅沢なサウンドを持っている。とくに低域のディテール感は好みにもよるが、これより価格上位の機種でもここまでの上質な音はなかなか味わえない。

コスパも素晴らしく、本来は4~5万円クラスの製品だが、生産終了後は在庫処分品が3万円以下で手に入るようになっており、全イヤホン見回しても最高クラスの低域が格安で手に入る意義は大きい。

イヤホンでありながら、ホールで聴いているかのような臨場感を味わえるという贅沢感が最大の魅力だ。

JVC HA-FX1100

9

高域

8.0/10

中域

9.0/10

低域

10.0/10

Pros

  • ビルドクオリティが高い
  • 温もり感のある音場
  • 濃厚で充実した音色
  • ディテールと情報量に満ちた低域
  • 空間の一体感

Cons

  • ボーカルの分離は良くない
  • 中域に厚みがあり、曲によりメリハリは緩く感じられる
  • ゆったりした低域は曲によってスピード感が足りない

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