【レビュー】qdc 3SH:厚みのある中低域と幻想的なほどに清潔に伸びる高域のバランスが素晴らしい

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免責事項

レビューは手持ちの機種と販売店舗さんのご厚意で試聴させていただいた範囲内の機種で作成しております。ケーブルは標準付属品のはずですが、セッティングは販売店舗さんにより異なる場合があります。イヤーピースは手持ちのものを使える場合は、それを用いてテストしております。レファレンスはJVC スパイラルドット++ Lサイズですが、機種によって使えない場合もあるかもしれません。使えない場合どうするかはその都度。

テスト機は基本的にAstell & Kern KANN CUBEを用いていますが、音質の特徴を捉えるために副次的にONKYO GRANBEATなど別のDAPも使っております。

一応解像度とかの比較用にイヤホンのレファレンスを定めていて、EarSonics ES5です。

 

スペック

  • ドライバー:バランスドアーマチュア
  • ドライバー構成:3ドライバー(Low ×1, Mid/High ×2)
  • 周波数特性:20Hz – 20kHz
  • インピーダンス:82Ω
  • 感度:106dB

使用感

装着感

カスタムIEMに似せたデザインになっており、耳にしっかりと嵌まる。

遮音性

耳をしっかり覆うので、遮音性は高め。

ビルドクオリティ

qdcは中華系最高峰に近いIEMメーカーなので、ビルドクオリティはかなり高い。ただしqdcはコネクタ周りが割れやすいという声もあるので、中古で買う場合は要チェック。

音質

総合:24/30
8/10

高域

8/10
8/10

手応えは柔らかく、音の筋が細かいシルキーな音色で幻想的

  • 質感:シルキー、すっきり
  • 明るさ:明るい
  • 拡張性:かなり良い
  • 派手さ:普通
  • 緻密さ:普通

尖りの少ないシルキーでしなやかに伸びる高域がこの機種の魅力。輝きがあり、空気感もあって手がかりがありながら、質感はあくまでさらっとした手触りを感じさせて、澄みきって抜けていく印象を受ける。そのため高域は開放的な印象を受け、ボーカル周りをうるさくしないので、ボーカルがきれいに浮き上がる。手応えは柔らかめ。またドライな印象は受けず、艶やかである。高域は充分に解像度が高いが、手がかりを強調する音ではないので、それほど緻密な印象は受けないだろう。

中域

8/10
8/10

密度感を感じさせ、確かな根元も感じさせる

  • 質感:ややウォーム
  • 明るさ:明るめ
  • 横幅:狭い
  • 奥行き:広い
  • ボーカル:少し前、自然な太さ、シルキー

中低域の厚みのある感じを受けて、少しウォームな印象を受け、マイルドである。音場はやや左右近く、密度を強調し、中域では濃厚感を味わえる。左右が近いせいで、奥行き感は強調されて感じられるので、吸い込まれるような感じがある。根元もしっかりしており、音には自然な太さがあり、中域は薄くならず、音のボディを感じさせてくれて、ふっくらした音を味わえる。

低域

8/10
8/10

ボディの感じられる中低域と重低音の存在感がわかるクリアな低域

  • 質感:ウォーム
  • 明るさ:明るめ
  • 重心:普通
  • 重み:普通
  • 重低音:普通

100hz~40hzまでやや重いブルッとした感じのしっかりした振動。30hzで沈み、20hz以下無音。ドラムとベースの分離は良い。ドラムは中低域で厚みもあり、ボディが明確にブルッと震える重量感が味わえる。色味はウォームで空気感も感じられる低域なので、JAZZでも風味を感じることができる。

インピーダンスが高いせいか、低域はプレーヤーの出力や味付けの影響を受けやすい印象がある。音質傾向にもよるが、手持ちではA&norma SR15ではだいぶすっきりし、ONKYO GRANBEATやSONY NW-A55やNW-ZX300では比較的パワフルに聴かせてくれる。

  • 【レビュー】SENNHEISER IE500 Pro:深く広がりを持つ重低音とディテールの緻密な中高域。ゼンハイザー渾身の正統派モニター

    SENNHEISERっぽいかっていうと意外と微妙っていう機種。本当にモニター的な音で正統派だから、とくにSHUREあたりの音が好きな人は装着感もクリソツなせいか引き寄せられやすいかも。とはいえ、差別化されているかっていうと「そうでもないかな」っていうところもあって、むしろSENNHEISERらしい豊かな中域表現がすっぽりなくなっている感じがSENNHEISERファンからすると微妙って印象になるかも。音に厚みはないよね。 結局SHUREやらWestoneやらに似せてくるのはいいんだけど、SHURE好きはSHURE買うだろうし、WeatoneファンもWestone買うんじゃないかな。まあWestoneはあまり欲しくないBluetoothケーブル付けて無駄に高く売ってるから、Westoneサイドから流れてくる人はいるかも知れない。 重低音にしっかりした広がりを感じられるあたりはSENNHEISERらしくていいけど、SENNHEISERサウンドを「豊かな音」って捉えている人は、「これはなんぞ?」ってなるかも。
  • 【レビュー】FAudio Major:ディテール感を重視した重心の低い低域の上に、全体的に適度な濃度感があり、高域はさわやかながら手がかりも用意されている。1ドライバーならではの統一感

    低域ではかなり定評のある機種で、この前にCampfireAudio ATLASをちょこっと聴いたけど、重厚感はこっちのほうがあるんじゃないかな? 少しウォーム傾向な音だけど、中低域はそんなにリッチさを強調しないので、低域重視とは言え、最終的にはJAZZよりは重厚なフルオケのクラシック、ロック、劇伴系サントラ、R&Bあたりがいいんじゃないかなぁという印象。重低音までよく見通せる深さのあるおかげで音の重みがダイレクトに感じられる感覚があるのが好き。

おすすめイヤホン

官能性

Current Swell 「It Ain't Right」

中低域がボリューミーで、その暖かさが中域の下側に感じられるため、濃厚感がある。ボーカルは少し熱気に包まれているため、柔らかくふっくらと聞こえ、甘味のある感じになるが、輪郭にはほどよい手がかりがあり、息感も丁寧に聞こえる。低域はマイルドな感じはあり、床面のビシバシ感は強調せずボンボンとした優しい膨らみがあって心地よい。この温かみのある中低域の音色が自然に上につながって、シルキーなハイハットもその温度を受けて暖かく色づく。

この曲をどう聴くかっていう時に、たしかにメリハリ感が強い感じではないけど、ウォームで音に豊満さと聞き心地を維持しながら、しっかりロックしているライブ感があるので、聞き疲れせずに浸りたいなら、非常におすすめできる。

Jess Glynne 「My Love(Feat. Route94)」

プレーヤー側に充分なゲインがあれば、この曲の低域をかなり素晴らしく聴かせてくれる。深みと厚みが同居し、ブーム感と温度感も充分な音で、ライブ感に満ちている低域。キーボードも太く、ハンドパーカッションも濃く濃厚で、この曲の重厚感は良く出る。全体的に濃厚ながらも清潔感もあって、下で太いボーカルは上ではすっきりとした空間にきれいに吸い込まれていく。

Ne-Yo 「So Sick」

全体的に温かみがある中に、ボーカルが少し清潔感を増して浮き上がる。濃厚感がある。ボーカルは明るすぎず、適切な太さと厚みを感じさせながら、息感も細かく出るので、ディテールとボリューム感のバランスが良くて、リアル。低域の深掘り感とスピード感も適切で、ディケイに余裕があるから、低域もそれほど主張が強くないにも関わらず、音場に充実感がある。

(K)NoW_NAME 「Harvest」

中域ではピアノや弦楽につややかさと厚み、低域ではベースに充分な温かみと深掘り感、ドラムに豊かな膨張感があり、全体的に穏やかで雄大な聴き応えを実現している。

この曲はイヤホンによっては中高域でギターとシンバルがうるさくなりやすく、ガチャガチャする場合もあるが、3SHは発色はきれいに出しつつ、手がかりを強調しすぎずにうまく空気感に昇華していて、むしろ中域の濃厚感を上方向にさわやかに開放してくれる。その浮揚力に乗って、ボーカルもサビでは自然な温度感を維持しながらふわっと浮き上がり、カタルシスを感じさせてくれる。

AXiS 「COCYTUS」

ダンス系の曲だが、低域が少しゆったりとした感じになるので、スピード感的には少し緩いと感じる人はいるかも知れない。ただし重みと厚みは充分。このイヤホンだとボーカルに生命的な温かみが出て、それを支えるドラムにも膨張感が出るので、ウォームで少しライブ感が強調されて聞こえる。全体的に濃厚なわりに見通しも良いが、メリハリ感だけは足りないと判断されることが多そう。どちらにせよダンス系はそれほど得意な印象を受けない。

下地紫野 & 悠木碧 「Harvest Moon Night」

やっぱり、こういう温かみのあるアコースティックサウンドを充実感とともに聴かせてくれるところが好き。ボーカルにツヤツヤ感とふっくらした甘味が充分にあるし、低域弦楽の風味が深くから中低域まで豊かに広がるから、その温度を受けて弦楽やピアノも光沢に温かみが感じられる。そう言いつつ、高域にも空気感がしっかりあって、濃厚な空気が滞留せずに風通しよく抜けていくから空間に澱みがない。

おすすめイヤーピース

この機種のノズルの太さは普通。比較的万能にイヤーピースを合わせやすい。

AZLA SednaEarFit

AZLA SednaEarfit

3SHの装着感がしっかりしていて押し込みが強いので、軸も傘も硬めのこのイヤホンはちょっと付け心地的にはきつく感じるかも知れない。ただ、低域の黒みが増し、濃厚感が非常に強く感じられるようになるので、低域不足に感じた場合は試してみるとよい。

JVC SpiralDot

JVC スパイラルドット

濃厚感を維持しつつ、中高域以上をすっきりさせてくれる。また3SHのやや左右が迫る音場が気になる場合は、このイヤーピースを使うと開放感が感じられて音場が広くなったように感じることができるはず。

JVC SpiralDot++

JVC スパイラルドット++

スパイラルドットと比べると張りと空気感が増しており、このイヤホンの場合、ハイハットのシャリシャリが感じやすくなり、シャンシャンという空気感も増す。とくにシンバル周りの高域に手がかりが増えて、バランス良く思えるかもしれない。また相対的に低域の発色も感じられるようになり、聞こえも良くなる。

final E-CLEAR

final E-clear

密度感は高くなるが、音がダイレクトに明瞭に聞こえて解像度感は高く感じられる。とくに女声ボーカルに埋没感を感じる場合、このCLEARの改善効果は高い。

AZLA SednaEarFit Light

中高域付近に少し張りが出てパリッとした感触が出る。ボーカルも息感に手がかりが増える印象。低域は濃い感じを維持しているが、AZLA SednaEarfit無印ほど黒々とはしない。

radius DeepMount

radius deeo mount

中域の方の少し中低域と分離が悪い感じが気になったら、このradius Deep Mountが改善してくれるかも知れない。中低域を少しスリムにし、中域に清潔感が出て、分離が良く感じられるだろう。中高域のシンバルやギターやピアノにも手がかりが増えて感じられるはず。ボーカルも聞こえが改善する。

【総評】組み合わせる機種によって、すっきり系に聞こえる場合と濃厚感が出て聞こえる場合があるが、どちらにせよレベルの高い空気感のある上品さのある音色が魅力

記事内でもすでに説明したが、このイヤホンは組み合わせるDAPによってかなり低域の印象が異なる場合がある。ふわっと幻想的に浮き上がってから抜けるような高域はおそらくどのDAPでもそれほど変化なく味わえると思うが、とくにR&Bやクラシック、JAZZなど中低域に空気感が欲しい場合は、プレーヤーの吟味が必要かもしれない。そういう意味で「相手を選ぶ」機種ではある。

qdcはドライバーを独自設計で特注しているだけあって、「qdcらしさ」という確かな哲学を感じられる音がある。音楽を聴くときにとっかかりになるような強い手がかりをそれほど強調しないにも関わらず、音に確かな伸びと空気感のあるディテールが感じられて、さわやかなのに味がしっかりある。とくにこの3SHは私が聴いてきた中では、濃厚感とスッキリ感のバランスをうまく調整している機種の一つに思え、個人的に高く評価している。おすすめ。

ただし記事内でも述べたが、低域は若干ゆったりしているので、スピード感のあるダンス曲とかだと場合によって緩く感じられることもあるだろう。

qdc 3SH

8

高域

8.0/10

中域

8.0/10

低域

8.0/10

Pros

  • qdcらしいすっきりした高域
  • 中低域の温かみと濃厚感
  • 聞き心地が良い

Cons

  • 低域は接続相手によっては薄味になる
  • 音場の左右は狭め
  • 低域のスピード感はゆったり

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